お知らせ

「下肢静脈瘤外来」初診患者の受け入れについて
標記の件につき、平成24年4月より心臓血管外科「下肢静脈癌外来」の初診、新患患者の受入を再開いたします。
関係各位の皆様方にはご迷惑をおかけし申し訳ありませんでした。

ご紹介

診療内容

心臓血管外科は、心臓や血管の病気に対して、手術をもってこれを治します。具体的には、主なものとして以下のものがあります。

1. 冠状動脈バイパス術
心臓自身に血液を送る血管(冠状動脈)が狭くなったり、閉塞したりする狭心症、心筋梗塞に対しては、まずカテーテルによる治療(風船により冠動脈の狭窄部を拡張し、ステントを挿入するなど)が行われますが,病変部がカテーテル治療に適さない場合には(狭窄が長かったり、血管の分岐角度が急でカテーテルが進められなかったり、ステント留置により他の重要な血管を閉塞させる危険性がある場合,また左主幹部病変のように入口部の狭窄で治療中に広範な心筋虚血を起こす場合など)、ご自身の血管(内胸動脈,橈骨動脈,胃大網動脈,大伏在静脈など)を用いてバイパス手術(迂回路をつくる)を行います。これは血管の径が1.5mmから3mm程度と細く、人工血管ではすぐに血栓ができて閉塞してしまうからです。 以前は人工心肺装置を用いて心停止下に血管吻合が行われていましたが、最近では、条件が合致すれば多くの症例で人工心肺を使用せず心拍動下に手術が行われています。

2. 弁形成術
弁置換術;心臓には4つの弁がありますが、血圧に抗して全身に血液を送る左側の心臓の弁(入り口の弁が僧帽弁、出口の弁が大動脈弁と呼ばれています)が特に重要です。これらの弁が狭くなったり、うまく閉鎖しなくなった場合、全身に送る血液の量が減少してしまいます。そこで心臓は全身に必要な血液を送るため、高い圧を出したり、逆流する分も含めて血液を駆出するようになり肥大、拡大を行って適応し代償します。しかしながらこの代償がやがて破綻すると心筋にも非可逆的な障害を残します。手術は、弁を治したり(形成術)、弁を置換(人工弁を使用)したりしてこの心筋障害の進行を止め,心臓を長持ちさせようとします。

3. 大動脈瘤手術
大動脈の壁の一部が弱くなりますと拡大して大動脈瘤となります。通常径の2倍以上の径となりますと破裂の危険性が増えますので、破裂する前に大動脈瘤を切除して人工血管による置換を行います。大動脈瘤の最大径と拡大するスピードが重要で、50~55mmを越えた場合には十分な評価と手術の検討が必要です。
また、大動脈壁が避けて、壁の中に血液が入りこれが大動脈全体に広がっていき、重要な枝を閉塞させてしまう大動脈解離という疾患があります。心臓から出てすぐの上行大動脈が解離している場合には、冠状動脈が閉塞したり、大動脈弁が支持を失って逆流したり、心臓周囲に血液が貯留したりするため(心タンポナーデといいます)緊急手術を行って救命する必要があります。

4. 先天性心疾患に対する手術
生まれながらにして心臓に障害(中隔の欠損など)がある場合、これを治します。尚、当院では、成人の先天性心疾患を対象としており小児の開心術は行っておりません。

5. 末梢動脈血行再建術
手足の閉塞した血管に対してバイパス手術などを行い血流を改善させます。

6. 下肢静脈瘤手術
下肢の表在する拡張・怒張した静脈(静脈瘤)を切除します。

主な取り扱い疾患
疾患名 手術名
狭心症 冠状動脈バイパス術(心拍動下バイパス術,off-pump CABGを含む)
心筋梗塞症 左室形成術、Dor(ドール)手術、心室中隔穿孔閉鎖術
僧帽弁狭窄症
僧帽弁閉鎖不全症
僧帽弁置換術・形成術
大動脈弁狭窄症
閉鎖不全症
大動脈弁置換術(弁輪拡大術を含む)
大動脈弁輪拡張症
マルファン症候群
大動脈基部置換術(ベンタール手術)
胸部大動脈瘤 大動脈瘤切除人工血管置換手術(弓部大動脈瘤、下行大動脈瘤、上行大動脈瘤)、
ステントグラフト内挿術
急性大動脈解離 上行大動脈、弓部大動脈置換術
胸腹部大動脈瘤 胸腹部大動脈瘤切除人工血管置換手術
腹部大動脈瘤 腹部大動脈瘤切除人工血管置換手術、ステントグラフト内挿術
左房粘液腫
心臓腫瘍
腫瘍切除術、心房中隔欠損症閉鎖術、心室中隔欠損閉鎖術
閉塞性動脈硬化症 末梢血管血行再建術(大動脈-大腿動脈バイパス術、大腿-大腿動脈バイパス術、大腿膝窩動脈バイパス術など)、
血管拡張術(ステント留置)
下肢静脈瘤 静脈瘤抜去切除手術
心房細動 メイズ手術
心室細動
心室頻拍症
冷凍凝固手術、植え込み型除細動器
心不全 両心室ペーシング(心外膜電極植え込み)
手術実績

1. 心臓血管外科は平成6年6月に開設され、現在は、循環器センター内の外科部門として、成人心臓血管疾患の手術治療に専従しております。平成18年末までに、手術総数約1500例の心臓血管手術を施行、内訳は開心術(心臓胸部大血管手術)820例、腹部大動脈瘤手術138例、末梢動脈疾患手術152例、下肢静脈瘤手術237例、ペースメーカー関連手術71例等です。
目指しておりますことは、横須賀で高度な心臓血管手術を良好な成績で提供させて頂くことです。心臓血管外科は手術成績で選ばれる時代となってきており、当院での現在までの手術成績を提示させていただき、皆様のご参考にして頂ければと思います。

2.  待機的冠動脈バイパス術や弁膜症手術は死亡率がそれぞれ1.4%、1.7%と良好な成績をあげることができております。 また、技術的に難度の高い手術も症例を重ね実績とさせて頂いてまいりました。いくつかを紹介させていただきます。

[1]人工心肺を使用しないオフポンプ冠動脈バイパス術を127例施行

[2]技量を要する僧帽弁形成術は、形成術を計画した53例中、術中に弁置換にコンバートした1例を除いて52例で完遂し、今のところ再手術はございません。

[3]心房細動を有する症例には積極的にメイズ手術を併施し(52例)、約7割の洞調律復帰率を得ています。

[4]頸動脈などの分枝再建を行う弓部大動脈全置換術を脳分離体外循環を用いて43例施行。脳合併症は1例2.3%です。

[5]大動脈基部置換(いわゆるベンタール氏型手術で、大動脈弁置換または形成術プラス両側冠動脈移植プラス上行大動脈置換の複合手術)を20例施行。
等々です。
大動脈疾患につきましては、最近の過去5年間は急性大動脈解離でも手術成績が安定し、死亡率も8%台まで低下してきております。今後も益々研鑽を重ね、より一層良好な成績となるように努力していく所存です。

3. 心臓大血管手術について詳しい情報が知りたい方(種々の治療法がお知りになりたい方)やセカンドオピニオンをお求めの方など、ご連絡いただければご相談させていただきます。

主な手術術式 待機手術 緊急・準緊急手術
  件数 死亡率 件数 死亡率
冠動脈バイパス手術 324 1.2% 106 11.3%
(オフポンプ) 69 1.4% 158 5.1%
心筋梗塞合併症手術
(心室瘤、破裂、中隔穿孔等)
27 14.8% 15 20.0%
弁形成術・弁置換術 155 1.7% 15 11.1%
成人先天性心疾患手術 24 0% 0 0%
心臓腫瘍手術 5 0% 0 0%
大動脈瘤・大動脈解離
※緊急は瘤破裂、A型解離例
76 10.5% 38 21.1%
急性大動脈解離過去5年     23 8.7%
腹部大動脈瘤手術 120 0% 18 2.0%
診察の受け方

・事前に内科総合受付にて電話予約が必要となります。
・診療日に紹介状持参の上、受診してください。
・紹介状をお持ちでない方は、内科総合受付へご相談ください。

専門用語の解説
専門用語 解説
off-pump CABG 人工心肺(ポンプ)を使用せず、心臓を停止させずに拍動したまま行う冠状動脈バイパス手術を意味します。吻合する冠動脈部位近くのみを固定器で固定して、短時間で吻合を終了してしまいます。吻合中はシャントチューブを使用し、血流を保ちながら手術をすることが多いため、心臓の収縮はほぼ維持されます。特に人工心肺を使用しないため、これによる弊害を抑えることができ、悪性腫瘍、感染症、呼吸器疾患、上行大動脈石灰化などを合併した症例、超高齢者で有用です。ただし、off-pump CABGのみでは吻合の難しいケースもあり、個々のケースで最良の方法を選択するのがよいと考えます。当院では最近の症例では7割くらいがoff-pump CABGで行われてます
MICS 低侵襲心臓手術 現在では主として、切開を小さくした開心術に対する用語として用いられ、人工心肺の使用の有無は問いません。創が小さく、美容的にもすぐれています。単弁置換や心房中隔欠損症の症例などに用いられています。
自己血貯血 貧血のない、状態の安定している患者さんで、手術の3週間前より、計画的に自分の血液を貯血します。800~1200mllの血液が貯血でき、多くの患者さんで(80-90%)無輸血手術が可能となります。
人工血管やバイパス手術に使用される自己の血管 人工血管にはポリエステル線維などで編まれた血管と抗血栓性に優れたゴアテックスやポリウレタンでつくられた人工血管などがあります。大動脈や第1分枝程度までの血管の再建手術に使用されます。しかしながら、5mm以下の小口径の人工血管になりますと、生きた内皮細胞が人工血管の内側にないため、すぐに血栓閉塞を起こしてしまいます。このため心臓の冠状動脈バイパス術や下肢の末梢の血管のバイパスのような細い血管の手術には、患者さんご自身の生きた血管が用いられます。冠状動脈バイパス術では、胸壁の裏側を走行している内胸動脈や、手(前腕)の橈骨動脈、右胃大網動脈、下肢の大伏在静脈(静脈ですが、動脈として使用します)などが用いられています。勿論、これらの血管を採取して部位は、他から血流がきておりますので、支障はありません。
人工弁 大きく、金属(パイロライトカーボン)でできた機械弁とブタやウシからの生体材料を用いた生体弁の2つにわかれます。前者は耐久性に優れますが、血栓予防のために抗凝固療法としての薬剤(ワーファリン)の内服が必要となります。後者は、手術直後に抗凝固療法としての内服が必要となるのみで抗血栓性には優れますが、耐久性の点で劣ります。妊娠を希望される方、抗凝固療法が行えない方(胃潰瘍など)、70歳前後以上の高齢者などを考慮して人工弁の選択が行われます。
人工弁や人工血管が挿入された患者さんが他の治療(特に歯科治療)を受ける場合の注意点について
心臓外科による治療の進歩にはめざましいものがありますが、その進歩を支えている一つに人工物(人工弁や人工血管等)の使用が挙げられます。しかしながら、一旦人工物が感染を起こしますと、これを除去する以外に有効な治療はなくなるといった危険性を持っております。特に血液に細菌が侵入する(これを菌血症といいます)場合には抗生物質による予防が大切です。歯科治療や大腸検査,泌尿器科での尿道へのカテーテルなどを挿入しての検査・治療、外傷等の場合、菌血症を起こす可能性が高く、主治医とよく相談して適切に対処してください。また、人工弁が移植されていてワーファリンを内服している患者さんの場合は、処置や・手術の際にワーファリンの減量ないし中止が必要となりますので、これについても主治医にかならず相談し指示を受けてください。